被相続人(亡くなられた方)が特に遺言をされていなかった場合には、相続財産は、相続権のある方(法定相続人)全員でいわば共有しているという状態になります。
しかし、そのままの状態で放置しておくと、財産の管理や利用、処分などの点でさまざまな不便が生じます。
そこで、相続権のある方(法定相続人)全員で話し合って、具体的に「誰が」、「どの財産を」、受け継ぐのかを決定します。
例えば、ある方が亡くなり、法定相続人として奥さんと長男・長女がいる場合、民法の規定では奥さんが2分の1、長男と長女がそれぞれ4分の1ずつとなっていますが、これを「自宅の土地建物は奥さん、自動車と株式は長男、預貯金は長女」というように決定することです。
この決定手続きのことを遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)といい、この遺産分割協議の結果決まった、財産の帰属の結果内容を書き記した書面のことを、遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)といいます。
遺産分割協議書は、特に用紙や枚数が指定されているわけではなく、手書きでもパソコン・ワープロで作っても何ら問題ありません。以下の3つの点に気をつければ大丈夫です。
1.遺産分割協議には、法定相続人(相続権のある方)全員が参加すること。
必ずしも全員が一堂に会する必要はなく、話し合いは電話で連絡を取り合い、遺産分割協議書は郵送して署名・捺印をしていただいても大丈夫ですが、必ず遺産分割協議書には全員の方が署名・捺印していただく必要があります。
遺産分割協議に参加していない法定相続人の方がおられると、遺産分割協議自体が無効になってしまいますのでご注意ください。
2.被相続人(亡くなられた方)の相続財産は、極力もれのないように列挙すること。
後で相続財産が発見された場合でも既になされた遺産分割協議の効力に影響はなく、その発見された財産についてだけ再度遺産分割協議をすれば足りますが、何度も遺産分割協議をするのはわずらわしいですよね。
そこで、当初から極力もれのないようにしておくことが大切です。
また、「新たに相続財産が発見された場合には、相続人○○○○がこれを相続する。」というような条項を入れておくのも一つの方法です。
3.法定相続人の全員が署名して、実印で捺印し、印鑑証明書を添付すること。
これは、遺産分割協議書としての効力を生じさせるための必須の決まりです。
遺産分割協議書(と印鑑証明書)は、相続登記の手続きの際には法務局へ、預貯金や証券会社の管理口座の名義変更または解約・払戻しの手続きの際には金融機関や証券会社へ提出します。
印鑑証明書の有効期限ですが、法務局への相続登記の申請の場合には、特に制限はありません。しかし、金融機関や証券会社の場合には、3ヶ月ないし6ヶ月以内という制限を設けておられるところが多いですのでご注意ください。
また、遺産分割協議書は上記のような一定のルールを守ればどなたでも作成できます。
しかし、以下のようなケースでは、司法書士などの専門家にご相談されることをおすすめいたします。
1.相続財産の中に不動産が含まれる方。
相続登記の手続きに遺産分割協議書が必要になるからです。
2.相続税が課税される(可能性がある)方。
相続税の申告手続きに遺産分割協議書が必要になるからです。
3.法定相続人どうしで意見が違っており、調整する役の人間が必要な方。
話し合いの結果を遺産分割協議書という書面にきちんと残しておくことで、将来のトラブルを防止することになります。
はしもと司法書士事務所では、皆様からの遺産分割協議書にまつわるご相談を承っておりますので、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
はしもと司法書士事務所
代表 司法書士・相続診断士・民事信託士 橋本浩史(奈良県司法書士会所属 第471号)
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員(会員番号 第6410360号)
(後見人候補者名簿及び後見監督人候補者名簿登載)
簡裁訴訟代理関係業務認定司法書士(認定番号 第1012195号)
一般社団法人相続診断協会認定 相続診断士(認定番号 第512848号)
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