相続廃除というのは、相続権を持つ者が被相続人を虐待したり、重大な侮辱をしたり、その他の著しい非行があるなどの場合に、被相続人の意思でその者の相続権を失わせる制度のことです。
「19.相続欠格とは」で述べましたように、相続欠格が、相続欠格事由に該当すれば法律上当然に何らの手続きを要せずに相続権を失うのに比べると、相続廃除は、家庭裁判所にその旨の申立てをすることが必要となる点で異なります。
具体的に相続廃除の申立てが認められる事由は、次のとおりです。
1.被相続人を虐待したとき。
2.被相続人に対して重大な侮辱をしたとき。
3.相続権を有する者にその他の著しい非行があったとき。
具体例としては、下記のような行為で、廃除の申立てが認められた事例があります。
・被相続人の財産を不当に処分した
・浪費、遊興などで多額の借金を作り被相続人に弁済させた
・重大な犯罪行為などの問題行動を繰り返した
・被相続人の反対を押し切り暴力団員と結婚し、被相続人の名前で披露宴の招待状を勝手に郵送した
いずれにしても、単に折り合いが悪いという程度で廃除が認められることはなく、家庭裁判所もかなり慎重に審理します。また、廃除が認められても、気が変われば取消しを申し立てることも可能です。
【廃除される対象者】
遺留分を有する推定相続人(被相続人の死亡時に相続人となるべき者)です。
従って、配偶者、子、直系尊属(父母など)のみです。
兄弟姉妹は遺留分を有しないため、そもそも廃除される対象にはなりません。
※兄弟姉妹に財産を渡したくない場合には、遺言書を作成して兄弟姉妹の具体的な相続分をゼロにすれば足ります。
【廃除の申立て方法】
被相続人が生前に自ら家庭裁判所に申し立てる方法と、遺言により廃除の意思表示をしておき、その遺言書により遺言執行者が家庭裁判所に申し立てる方法があります。
【相続廃除の効果】
◎家庭裁判所の審理の結果、廃除された者は、相続権を失います。
◎但し、廃除された者に子などがいる場合には、廃除された者が受け継ぐはずだった相続分を引き継ぎます(代襲相続)。
⇒代襲相続については、「18.代襲相続とは」をご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
はしもと司法書士事務所
代表 司法書士・相続診断士・民事信託士 橋本浩史(奈良県司法書士会所属 第471号)
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