上申書とは、文字どおり、お上に申し上げる書面という意味で、国語辞典風に説明すれば、官公庁や警察などに対して、法的な所定の手続きなどによらずに、単に申し立てや報告などを行うための書類・報告書のことをいいます。
私ども司法書士は、相続による所有権移転の登記申請の業務において、お客様のためにこの上申書を作成して法務局に提出することがあります。それには2つのケースがありますが、ここでは他に相続人がいないことを証明するための上申書についてご説明します。
具体的には、被相続人(亡くなられた方)の除籍謄本や改正原戸籍謄本が、戦災や災害などの理由で消失していたり、保存期間の経過により廃棄処分されていたりして、登記申請に必要な分を添付できない場合に、この上申書を作成することになります。
戸籍法施行規則の改正により、除籍謄本や改正原戸籍謄本の保管期限が伸長され、記載されている方全員が除籍されてから150年となったことから、徐々に廃棄処分で添付できないというケースは減っていくようにも思えますが、施行規則改正前に廃棄されてしまったものや、戦災や災害による消失の場合はどうにもなりません。
不動産登記法上は、相続を原因とする所有権移転登記の申請には被相続人の除籍謄本や改正原戸籍謄本の添付を求められていますが、存在しないものは添付できず、かといって相続登記できません、では当事者の方も困るでしょうから、代替手段として考え出された方法が、この上申書を用いる方法です。
上申書には、簡単に言いますと、「除籍謄本や改正原戸籍謄本が廃棄や消失等の理由で添付できませんが、相続人は私たちの他にはいないことは間違いございません。決して御庁にはご迷惑をおかけしませんので、本登記を受理いただきたく宜しくお願い致します。」などと書いて、相続人全員が実印を捺印し、印鑑証明書を添付します。
※なお、この印鑑証明書は、遺産分割協議書を作成した場合には、遺産分割協議書に添付する印鑑証明書と兼用可能です。また、有効期限もありません。
また、権利証などの書類を追加で提出することを求められるのが通常です。もっとも、法務局の担当登記官により微妙に異なることが多いため、私ども司法書士は、その都度法務局と事前打ち合わせを行い、必要書類を確認するようにしています。
はしもと司法書士事務所でも、この、他に相続人がいないことを証明するための上申書の作成もさせていただきますので、詳しくはご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
はしもと司法書士事務所
代表 司法書士・相続診断士・民事信託士 橋本浩史(奈良県司法書士会所属 第471号)
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員(会員番号 第6410360号)
(後見人候補者名簿及び後見監督人候補者名簿登載)
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