Q.私たち夫婦もそろそろいい歳になってきて、将来の相続のことも気になってきています。最近では、相続税が増税されて、相続税を払わなければならない人が増える、という話を盛んに耳にします。
子供たちに財産を残してあげたいですが、相続税のことを考えると何かと心配なので、相続対策をしたいと思うのですが、何から手をつけたら良いのか、さっぱり分かりません。相続対策は具体的にどんなことをすれば良いのか、教えてください。
A.一般に、相続対策と呼ばれているものには、大きく分けると、1.遺産分割対策、2.相続税対策、3.納税資金対策、の3つの柱に分けられます。この3つの柱を軸にして、具体的に何をすれば良いか、考えていきましょう。
平成25年度税制改正によって相続税法が改正となり、平成27年1月1日以降に開始する相続から、相続税の基礎控除額の見直し、一部税率の引き上げ、各種の特例制度の見直しなどが行われました。
マスコミの報道や知人の方などからそのようなお話を聞かれた方も多いと思います。増税のお話だけに、不安を感じられるのも無理はないでしょう。
では、それに対して、どのような対策をすれば良いのでしょうか。
それは、保有されておられる資産の現状を正確に把握し、それに基づいて具体的な相続対策を講じていく、ということに尽きます。
そこで今回は、相続対策の3つの柱について大まかにご説明させていただきます。
【1.遺産分割対策】
遺産分割対策というのは、遺産分割でもめないようにするために、「誰に対して、どの財産を、どれだけ承継させるのか」ということをあらかじめ考えて対策を立てておくことです。
この、遺産分割対策は、相続税がかかるか否か、にかかわらず、すべての方が本来考えておかなければならないことです。
なぜなら人は誰でも必ずいつかは亡くなるわけですし、相続に関する争いは、実は相続税の課税対象となっていない(=遺産総額が比較的少ない)ケースで頻発しているからです。
具体的には、このような対策が考えられます。
◎遺言(公正証書遺言など)を作成する
・遺言書に書かれた内容の効力が民法の法定相続分の規定よりも優先することを利用した対策です。遺産分割対策の8割方はこの遺言の作成で解決します。
◎贈与を利用して生前から事実上の遺産分割を進める
・贈与税の基礎控除枠(年間110万円)や、相続時精算課税制度などを活用することで、贈与税の負担を回避しつつ対策を講じることができます。
◎保有財産を分割しやすい財産へ組み替え
・不動産などの分割しづらい財産を、分割しやすい他の財産に組み替えることなどです。
◎信託を活用した対策
・契約や遺言などによって、財産を信託銀行や信頼できる方などに託す、という方法をとることにより、遺産分割対策を立てることができます。
【2.相続税対策】
これは、将来かかってくる(かもしれない)相続税を少しでも節税しよう、ということを考えてあらかじめ対策を立てておくことです。相続税がかかる(かもしれない)方にとって切実な問題だと思います。
具体的には、このような対策が考えられます。
◎保有資産の縮小・移転による対策
・贈与税の基礎控除枠(年間110万円)を活用して生前に贈与
・贈与税の配偶者控除枠(2,000万円)を活用して生前に贈与
◎課税価格を引き下げる対策
・所有不動産を賃貸用にする
・小規模宅地等の評価減の特例を活用する
・養子縁組をして相続人の人数を増やす
◎優遇制度を活用した対策
・生命保険へ加入して非課税枠を活用する
・死亡退職金の非課税枠を活用する
※生命保険・死亡退職金のいずれにも、500万円×法定相続人の人数、という非課税枠が設けられています。
【3.納税資金対策】
納税資金対策というのは、将来相続税がかかってくる場合に、その納税のための資金などを今のうちから準備しておこう、と考えてあらかじめ対策を立てておくことです。
相続税の納税額は結構まとまった額となることが多いです。将来、遺産を相続される相続人の方がそのまとまった額を工面することは容易ではありません。
また、我が国の国家財政状況などを勘案しますと、将来さらに相続税が増税される可能性もありますので、事前の資金対策がますます重要になってきます。
具体的には、このような対策が考えられます。
◎生命保険の活用
・被相続人(となりうる方)を被保険者とし、相続人(となりうる方)を保険金の受取人とする生命保険に加入しておけば、いざという時には相続人の方に保険金が入りますので、納税資金として活用できます。
◎物納の準備
・財産が不動産の場合には、物納の条件を満たすための準備をあらかじめしておきます。
はしもと司法書士事務所では、このような皆様の相続対策についての疑問やお悩みに対し、皆様と一緒により良い解決策を考えていきますので、お気軽にご相談ください。
また、上記のような相続対策のより具体的な中身につきましては、この「法律相談室」のコーナーでも順次取り上げていこうと考えておりますので、ご期待ください。
※相続税や贈与税等に関する詳細なご相談は、税理士などの専門家にされることをおすすめいたします。
はしもと司法書士事務所でも、相続税や贈与税等に精通した税理士の先生をご紹介することが可能ですので、お気軽にご相談ください。
はしもと司法書士事務所
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