Q.相続税と贈与税が大きく改正されて、かなりの増税になったと聞いたのですが、具体的にはどのように変わったのですか?
A.相続税と贈与税は、平成25年の税制改正で大きな変更が加えられ、平成27年1月1日以降に開始される相続などから適用されることになりました。
全体としてみれば基本的には増税の方向での改正ですが、一方で負担軽減のために以前から設けられていた各種の特例などの適用範囲が拡大されたことから、負担軽減にも一定の配慮がされていると見ることもできます。
具体的な改正点を箇条書きにしてみると、以下のとおりとなります。
ポイント1.相続税の基礎控除額の引き下げ
ポイント2.相続税の最高税率の引き上げ
ポイント3.未成年者控除・障害者控除の金額の引き上げ
ポイント4.小規模宅地の特例の適用対象面積の拡大
ポイント5.贈与税の最高税率の引き上げ
ポイント6.親・祖父母からの贈与の優遇
ポイント7.相続時精算課税制度の適用対象の拡大
※以下では、各ポイントのタイトル文字について、増税方向のものを赤字で、減税方向のものを青字で、どちらともいえないものを黒字で表示します。
ポイント1.相続税の基礎控除額の引き下げについて
(旧)5000万円+1000万円×法定相続人の数
↓
(新)3000万円+600万円×法定相続人の数
基礎控除額とは、相続した財産の価格から、無条件で差し引くことができる金額のことです。
つまり、相続財産の価格がこの金額以下であれば、相続税はかかりません、ということです。
例えば、法定相続人が3人の場合、
(旧)なら5000万円+1000万円×3=8000万円だったのが、(新)では3000万円+600万円×3=4800万円となり、、一挙に4割もダウンしたことになります。
例えば相続財産が6000万円だった場合、(旧)なら相続税はかかりませんでしたが、(新)ではかかってしまうことになります。
つまり、(旧)のもとでは相続税が課税される割合は全体の4%程度だったのが、(新)のもとでは7~8%程度に増えるものと予想されています。
ポイント2.相続税の最高税率の引き上げについて
(旧)課税対象額に応じて6段階の累進課税、税率は10%~50%
↓
(新)課税対象額に応じて8段階の累進課税、税率は10%~55%
具体的には、下記の2段階の区分が新設されて細分化・税率アップされました。
その他の区分の場合は変更ありません。
課税対象額が2億円超3億円以下の場合…40%から45%に増税
課税対象額が6億円超の場合…50%から55%に増税
ポイント3.未成年者控除・障害者控除の金額の引き上げについて
(旧)
未成年者控除…(20歳-相続時の年齢)×6万円
障害者控除…(85歳-相続時の年齢)×6万円(特別障害者は12万円)
↓
(新)
未成年者控除…(20歳-相続時の年齢)×10万円
障害者控除…(85歳-相続時の年齢)×10万円(特別障害者は20万円)
相続や遺贈により財産を受け取った者が20歳未満であった場合や、一定の要件を満たす障がい者であった場合に、相続税額から差し引くことのできる金額のことです。
これらの金額が引き上げられましたことから、実質的に減税となりました。
ポイント4.小規模宅地等の特例の適用対象面積の拡大について
(旧)居住用宅地の場合、240㎡まで
居住用宅地と事業用宅地とがある場合、合計で400㎡まで
↓
(新)居住用宅地の場合、330㎡まで
居住用宅地と事業用宅地とがある場合、合計で730㎡まで
小規模宅地等の特例とは、被相続人の自宅やその事業に使われていた宅地の評価額を、最大で80%軽減する特例のことです。
これらの宅地は生活や収入の基盤となる財産であるため、相続税を納めるためにこれらの宅地を売却しなければならなくなる事態を避けるために設けられています。
その適用対象となる宅地の面積が拡大されたことにより、実質的に減税となりました。
ポイント5.贈与税の最高税率の引き上げについて
(旧)課税価格に応じて6段階の累進課税、税率は10%~50%
↓
(新)課税価格に応じて8段階の累進課税、税率は10%~55%(一般の贈与の場合)
具体的には、従来は課税価格が1000万円超の場合には一律50%だったところ、下記のとおり区分が新設されて細分化・税率変更されました。
1000万円以下の場合は変更ありません(一般の贈与の場合)。
課税価格が1000万円超1500万円以下の場合…50%から45%に減税
課税価格が1500万円超3000万円以下の場合…50%で据え置き
課税価格が3000万円超の場合…50%から55%に増税
ポイント6.親・祖父母からの贈与の優遇について
(旧)贈与税はすべて一律の税率により計算されていた
↓
(新)20歳以上の者が父母や祖父母などから贈与を受けた場合の特例税率の新設
20歳以上の者が父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税について、一般の贈与と異なる税率(特例税率)が適用されることになりました。
具体的には、課税価格が300万円超4500万円以下の場合に、一般の贈与よりも税率が軽減されています。
ポイント7.相続時精算課税制度の適用対象の拡大について
(旧)贈与をする人(贈与者)…65歳以上の父母
贈与を受け取る人(受贈者)…20歳以上の子
↓
(新)贈与をする人(贈与者)…60歳以上の父母、祖父母
贈与を受け取る人(受贈者)…20歳以上の子、孫
贈与者については年齢が引き下げられたのと、祖父母も対象者に加えたこと、受贈者については孫も対象者に加えたことが改正点です。これにより、適用範囲が拡大され、実質的に減税の方向となります。
※なお、本稿では、相続税制についての一般的なお話をさせていいただいております。具体的な税務相談は、税理士などの専門家にされることをお勧めいたします。
また、はしもと司法書士事務所でも、相続税に精通した税理士の先生をご紹介することが可能ですので、お気軽にご相談ください。
はしもと司法書士事務所
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