住宅ローンなどでお金を借りると、その借金を担保するため、金融機関や保証会社は不動産に抵当権という権利を付けます。
そして住宅ローンなどを返済し終えると、もはやその抵当権は必要なくなるので消滅するのですが、登記簿の記録まで自動的に消えるわけではありません。
そこで、不動産の所有者が、金融機関や保証会社と共同で抵当権の抹消登記を申請する必要があるのです。
住宅ローンなどを返済し終えると、金融機関や保証会社から次の書類を渡されます。他にも付属書類があるかもしれませんが、登記申請に必要な書類は以下のものです。
①抵当権解除証書
住宅ローンなどの返済が終わりましたので、抵当権を抹消してもいいですよ、という書類です。(逆に言うと、金融機関や保証会社がこの書類をくれることこそが、ローンの返済が終わった証です。)
書類のタイトルは金融機関により多少異なりますが、「抵当権解除証書」「弁済証書」「放棄証書」が多いです。
また、この書類がなくて、代わりに次の②の抵当権設定契約証書にゴム印で「本契約は解除しました。」の文字とともに日付と代表者名が押されることもあります。
日付など記載事項が空欄のまま渡されることもありますので、金融機関などの担当者に確認することをおすすめします。
②抵当権設定契約証書
住宅ローンを組んだことを証明する契約書です。契約に際してお客様が署名捺印された書類であり、契約の時から金融機関などが保管していたものです。
住宅ローンの契約内容が記載された書類ですが、登記という面では上で述べたように①の抵当権解除証書を兼ねる場合もありますし、次に述べる③の登記済証を兼ねる場合もある書類です。
③登記済証又は登記識別情報
抵当権設定の際の抵当権についての権利証です。これも契約の時から金融機関などが保管していたものです。
登記済証か、登記識別情報かのいずれかを渡されることになりますが、具体的にどちらになるのかは次のとおりです。
◎登記済証…これは②の抵当権設定契約証書に法務局の「登記済」との赤いゴム印が押されたもので、別途書類があるわけではありません。
(つまり、1枚の抵当権設定契約証書が上記の①②③を兼ねるケースもあり得ます。)
比較的昔の、法務局がオンライン化される前の形式です。10年以上前に住宅ローンを借り入れされた方は、確実にこちらの形式です。
◎登記識別情報…A4判の緑色の用紙の下部に12ケタの数字とアルファベットを組み合わせたパスワードが書かれたものです。パスワード部分は通常、シールを貼って隠してあります。
不動産1筆につき1枚ずつ(敷地と一体化したマンションなら一体で1枚)あります。
平成17年~20年頃にかけて、全国の法務局がオンライン化された後に発行されたものですので、比較的最近に住宅ローンを借り入れされた方は、こちらの場合が多いです。
※全国の法務局がいつからオンライン化されたかは当事務所でも分かりますので、お客様の場合がどちらになるのかなど、詳しくはお気軽にご相談ください。
④金融機関などの資格証明書
金融機関などの会社・法人の登記簿です。タイトルは「代表者事項証明書」「現在事項一部証明書」などが多いですが、お客様が抵当権を設定された後にその金融機関などが合併したり社名変更した場合などは、その変遷を証明するため、複数の証明書を渡される場合があります。
なお、その金融機関などの現在の代表者の資格の証明書は、3ヶ月間しか有効期間がないため、注意が必要です。
※3ヶ月を過ぎている場合でも別途対応可能ですので、お気軽にご相談ください。
⑤委任状
金融機関と、お客様(=抵当権が設定されている不動産の所有名義人)の双方が必要です。
金融機関の分は、渡されますので大丈夫です。
お客様の分は、当事務所にて作成可能ですので、お気軽にご相談ください。
なお、委任状のご印鑑は、認印で大丈夫です。
【抵当権の登記を抹消せず放置するとどうなるのか?】
返済が終わって借金が無くなっている以上、実体としては抵当権も消滅しています。なので、金融機関によって競売にかけられることはなく、登記を放置してもただちに不利益になることはないでしょう。
しかし、後にまた住宅ローンを組んだり、他に売却する際には抹消しなければなりません。あまりに長く放置してしまうと、不動産の所有者に相続が発生したり、抹消書類を紛失したり、金融機関などの合併・社名変更・本店の移転があったりして権利関係が複雑になり過ぎるおそれがあります。
そうならないよう、抵当権の登記は早めに抹消されることをおすすめします。
※抹消せず長期間放置してしまった場合につきましては、26.抹消書類を何年も放置した場合の抵当権抹消登記の項目をご参照ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
はしもと司法書士事務所
代表 司法書士・相続診断士・民事信託士 橋本浩史(奈良県司法書士会所属 第471号)
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員(会員番号 第6410360号)
(後見人候補者名簿及び後見監督人候補者名簿登載)
簡裁訴訟代理関係業務認定司法書士(認定番号 第1012195号)
一般社団法人相続診断協会認定 相続診断士(認定番号 第512848号)
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