6.権利証を無くしてしまった時はどうなるのか? その2 将来の対処法

権利証を紛失していたとしても、登記をする必要が生じない限り、そもそも権利証が必要になる場面はありません。


ただ、将来不動産を売却・贈与したり、担保を設定したりする場合などには、本来は権利証の提供が必要になります。そこで、代わりに以下の方法によることになります。

 

【1.事前通知】


法務局から登記義務者(売主や贈与者など、権利を渡す側の方)宛に、本人限定受取郵便などで登記申請があった旨の通知が来ます。

この郵便を受け取った登記義務者は、一定の期間内(日本国内2週間、海外4週間以内)に申請の内容が真実である旨回答し、実印を捺印して通知書を法務局に返送します。

この返送がなされて初めて登記が完了し、逆になされないと登記申請は却下されます。


但し、実務では、不動産の取引(売買)や金融機関の担保設定のケースでこの方法を使うことはまずありません。買主が売主に代金を支払ったのに、売主が事前通知の申出をしなかった、あるいは申出に不備があったなどの理由で登記が却下されて買主の権利が保全できない、というリスクがあるからです。

 

【2.資格者代理人による本人確認情報の提供制度】


司法書士などの資格者代理人が本人と面談し、本人の運転免許証などの身分証明書の呈示を受けて本人であることを確認して、司法書士がその責任において本人確認をしたことを明らかにした上で、その内容を「本人確認情報」という書類にして、権利証の代わりに法務局に提供するという制度です。

その本人確認情報が適正であると登記官が認めれば、1.の事前通知を省略して登記が実行されます。


実務では多くの場合、この方法を用いて登記が行われています。

詳しくは、下記のページに詳しくご説明しておりますので、ご参照ください。

17.権利証を無くしてしまった時などの本人確認情報について

 

【3.公証人による本人確認制度】


これも2.の本人確認情報とよく似た制度ですが、確認をするのが公証役場の公証人である点が違います。登記申請用の委任状に本人が署名・捺印したものを用意し、その委任状に「確かにご本人に間違いありません」という認証文を公証人に付けてもらい,その委任状を登記申請書に添付すれば良い、という制度です。これも内容が適正であると登記官が認めれば、1.の事前通知を省略して登記が実行されます。


ただ、この方法はあまり用いられていないようです。

 

このように、権利証を無くしたからといって権利を失ったり、登記ができなくなるということはありません。しかし、上の代替手段はいずれも余分な手間と費用がかかってしまうことは否めません。


やはり、権利証の管理には細心の注意を払っていただき、紛失したり盗まれたり、登記識別情報を第三者に知られないようにしていただくことが最善の方法ですのでよろしくお願いいたします。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。