20.不動産の登記簿について その2 登記事項証明書の見方

登記簿謄本(登記事項証明書)は、その不動産(土地や建物)に関する重要な情報の宝庫ですが、独特のルールにのっとって記載されているため、初めてご覧になる方にとってはなかなか理解しづらいかもしれません。

そこで今回は、登記事項証明書の見方についてご説明させていただきます。

 

【登記事項証明書(全部事項証明書)の構成】

 

登記簿謄本(登記事項証明書)は、以下の5つの部分に分けられています。そのうち特に重要なのは「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」の3つの部分です。

 

◎表題部

土地や建物の物理的な状況を表している部分です。
ちなみに、この表題部に関する登記手続きは、司法書士ではなく土地家屋調査士の業務領域になります。

 

[具体的な記載内容]
・土地の場合には所在(「○○市○○一丁目」など)、地番、地目(「宅地」「田」など利用状況のこと)、地積(土地の広さのこと)など。
・建物の場合には所在、家屋番号、種類(「居宅」「店舗」など利用のされ方のこと)、構造(「木造かわらぶき2階建」など、建物の材質や階数のこと)、床面積など。

 

◎権利部(甲区)

土地や建物に関する権利についての登記事項を記載する欄です。
このうち甲区では、所有権に関する登記事項が記載されます。
この権利部から下の部分の登記手続きを、私たち司法書士が担っています。

 

[具体的な記載内容]
表の左から順に「順位番号」「登記の目的」「受付年月日・受付番号」「権利者その他の事項」が記載されます。

 

・順位番号…順に1番、2番、3番と登記されます。下へ行くほど新しい登記になります。民法の規定により、この順位の先後によって登記の優劣が決まります。
・登記の目的…「所有権移転」「所有権保存」などと記載されます。他に差押や仮差押がなされた場合にも、ここにその旨が記載されます。
・受付年月日・受付番号…その登記申請が法務局に受付された年月日と受付番号です。受付番号は、年の始めの申請順に第1号、第2号…と振られています。
・権利者その他の事項…登記がなされた年月日と登記の原因、権利者の住所と氏名が記載されます。

 

◎権利部(乙区)

土地や建物に関する権利についての登記事項のうち、この乙区では、所有権以外の権利のうちで登記可能な権利に関する登記事項が記載されます。

 

[登記可能な権利の例]
・地上権、地役権、永小作権、賃借権、採石権など不動産の利用に関する権利
・抵当権、根抵当権、(不動産)質権、先取特権など不動産の担保に関する権利

 

[具体的な記載内容]
表の左から順に「順位番号」「登記の目的」「受付年月日・受付番号」「権利者その他の事項」が記載される点は、甲区の場合と同様です。
以下、甲区の場合と異なる点のみを挙げます。

 

・登記の目的…「抵当権設定」「抵当権抹消」など、権利の設定や抹消のほか、内容の変更や移転などの登記の目的が記載されます。
・権利者その他の事項…登記がなされた年月日と登記の原因、権利者の住所と氏名のほか、権利に関する内容(抵当権なら債権額、利息や損害金の利率、債務者の住所と氏名など)が記載されます。

 

◎共同担保目録

共同担保目録とは、1つの(根)抵当権などに対して複数の土地や建物が担保になっている場合に作成される、いわば「担保の土地・建物リスト」のことです。
代表的な例は、皆様がお家の住宅ローンを借りられる時に、ご自宅の土地と建物が共同担保となる場合です。

 

わざわざ共同担保「目録」と呼ぶのは、かつての紙の簿冊式の登記簿の時代に、登記簿本体とは一応別のリストとして綴じられていたことの名残です。

したがって、不動産登記簿がコンピュータ化された現在でも、この共同担保目録は、何も言わずに登記事項証明書を請求しても勝手には記載してくれません。必ず「共同担保目録付き」と指定して請求する必要があります

 

◎信託目録

信託目録とは、信託に関する登記がなされた場合にその内容(委託者・受託者・受益者の氏名や信託の目的など)が記載されたリストのことです。信託登記を申請する際には必ず信託目録を添付することが必要となります。

 

この信託目録も「目録」であるため、取得したいと思った時には上記の共同担保目録と同様に、必ず「信託目録付き」と指定して請求する必要があります。