DV(ドメスティック・バイオレンス)やストーカー、それに児童虐待の問題は、それらによって殺人事件に発展したケースもあるなど、社会的に深刻な問題となっています。
そこで、全国の各市区町村では、いわゆるDV防止法、ストーカー防止法、児童虐待防止法によって、それらの被害を受けておられる方を支援する措置として、被害者の方からの申出があった場合には住民票や戸籍などの写しの閲覧や取得が制限されています。
これによってDV、ストーカー、児童虐待の加害者などが、住民票などを勝手に取得して被害者の方の住所を突き止めたりしないように注意が払われています。
一方、これらの被害者の方が不動産の登記申請の当事者になったり、直接の当事者でなくても相続にまつわる遺産分割協議に参加するなどして、登記申請に関与するケースが多々あります。
そのような場合には、登記簿の記載や申請書の添付書類には通常、被害者の方の住所が記載されています。
登記簿(登記事項証明書)は、手数料さえ払えば誰でも取得することが可能です。
また、利害関係人でありさえすれば、登記申請書や添付書類を閲覧することができるという制度もあります。
住民票や戸籍などのプライバシー情報と異なり、登記簿の情報は広く一般に公開された情報だからなのですが、だからといってDV、ストーカー、児童虐待の被害を助長するようなことはあってはなりません。
そこで、法務局でもこれらの被害者の方が、加害者に住所を知られて不利益を被ることのないように、次のような措置がとられています。
☆被害者の方が登記義務者になる場合(例.不動産の売主、住宅ローンの担保の設定を受けている方など)
住民票上の住所(加害者の知らない、今の緊急避難場所としてのご住所)が登記簿上の住所と異なっている場合でも、住所変更の登記を要しません。
つまり、2.登記簿上の名義人の住所・氏名の変更登記の必要書類の項目でご紹介した手続きの大きな例外となります。
☆被害者の方が登記権利者になる場合(例.不動産の買主、贈与を受けられた方など)
登記簿に新しく記録される被害者の方の住所は、住民票に記載された住所(加害者の知らない、今の緊急避難場所としてのご住所)ではなく、登記申請書に記載された(以前の)ご住所になります。
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いずれの場合にも、登記簿の記録上、DVなどの被害から逃れて現在お住まいのご住所の情報が現れないような措置がとられます。
これらの場合に加え、被害者の方からの申出により、登記申請書や添付書類を閲覧することを制限できるという制度があります。
具体的には、被害者の方の住所が分かる情報の部分を隠して閲覧させることになります。
この制度によって、例えば相続の登記で遺産分割協議書に記載された被害者の方の住所を加害者に見られることをも防止することが可能になります。
もっとも、これらの措置は自動的になされるわけではなく、法務局に対して申出をする手続きが必要になります。
その申出にあたっては、市区町村が発行した、DVなどの被害者の支援措置を受けている旨の証明書が必要となります。
いずれにせよ、慎重な手続きが必要となりますので、詳しくは司法書士にご相談ください。
【ご注意】
本ページの内容は、法令等に基づく一般論的な内容を、読者の方に分かりやすく解説することをめざしたものです。
従いまして、個別具体的な事例におけるご質問には、当事務所にご依頼いただいておりますお客様を除き、回答致しかねますのでご了承ください。
なお、個別具体的な事例におきましては、実際に申請書を提出される予定の管轄の法務局、または実際に登記手続をご依頼される司法書士の先生にご相談されますことをおすすめいたします。
はしもと司法書士事務所
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