26.抹消書類を何年も放置した場合の抵当権抹消登記

Q.私は5年ほど前に自宅の住宅ローンを完済しました。その際、銀行から抵当権の抹消用ということで書類を受け取ったのですが、その頃は仕事が忙しかったもので、特に何もすることなくそのまま放置していました。

 

最近、あることがきっかけで抵当権の抹消登記をしていなかったことを思い出しました。
前に銀行からもらった書類をそのまま使って、今になって抵当権の抹消登記をすることはできるのでしょうか?。

 

A.5年ほど前に銀行から受け取られた書類の中には、現時点ではそのまま使用できない書類もございます。改めて取得し直すことは可能ですので、お気軽にご相談ください。

 

 

ご質問者様のように、晴れてご自宅の住宅ローンを完済されて、銀行から書類を受け取ったのは良いけれども、そのままにされている方は結構多いのが現状です。

 

なぜなら、住宅ローンをお借り入れされた際に金融機関が設定した抵当権は、実体としてはローンを完済されたことで消滅しているため、直ちにその登記を抹消しなくても支障は生じないからです。

 

ただ、登記簿の記録上は、抵当権の抹消登記を申請しない限り、抵当権の登記は残ったままの状態になります。抵当権の登記を長期間抹消せずに放置されますと、次のような問題が生じます。

 

1.将来、ご自宅の不動産を売却したり、新たにローンを借り入れされる際に、そのままでは売却・借り入れできず、取引に支障をきたします。

2.住宅ローンを借り入れされていた金融機関が経営破綻して無くなったり、合併などで統廃合された場合に、手続きが複雑化してしまいます。

3.住宅ローンをお借り入れされていた方がお亡くなりになったり、認知症などの精神障害により十分な判断能力が無くなったりされると、手続きが複雑化してしまいます。

 

そこで、今回のご質問者様のケースでは、抵当権の抹消用の書類はお手元にあるとの前提でご説明いたします。(紛失された場合など、お手元にない場合には、金融機関に書類の再発行を要請するなど、手続きが複雑になります。詳しくはご相談ください。)

 

抵当権抹消登記の必要書類につきましては、1.抵当権抹消登記の必要書類の項目でご説明させていただいたとおりです。

 

このうち最も問題となるのは、金融機関などの資格証明書です。この資格証明書は、委任状など他の書類に記載されている金融機関の代表者の方が確かに代表者であることを証明するための金融機関の会社(法人)登記簿の証明書で、発行の日から3ヶ月以内のものを登記申請書に添付することとされています。したがいまして、長期間放置されたことで有効期限が切れていることになるため、そのまま登記申請の添付書面として使用することはできません。

 

そこで、この資格証明書の再取得が必要となるわけです。金融機関の代表者の方が現在も交代されていなければ簡単ですが、交代されている場合には、委任状などに記載されている代表者の方が確かにその金融機関の代表者であったことを証するため、閉鎖された記録も記載された金融機関の会社(法人)登記簿の証明書が必要となることもあり得ます。

 

また、金融機関から受け取られた抵当権解除証書に、抵当権が解除された日付が記入されていないケースも多いです。登記の申請にあたってはその日付を記入しておく必要があります。適当に入れれば良いというわけではなく、金融機関の担当者の方との打ち合わせが必要になります。

 

このように、住宅ローンを完済された場合には、お早め(原則として3ヶ月以内)に抵当権の抹消登記の手続きを済まされることをおすすめします。

 

また、3ヶ月を過ぎて抵当権の抹消登記の手続きを済ませておられない皆様は、はしもと司法書士事務所でも必要書類を手配することが可能ですので、お気軽にご相談ください。