8.後見制度支援信託について その2 疑問にお答えします

前回(7.後見制度支援信託について その1 制度のあらまし)では、制度の利用の流れとメリットについてお話しさせていただきました。

 

今回は、後見制度支援信託について、よくあるご質問にお答えいたします。

 

Q1.後見制度支援信託の対象となる人はどんな人ですか?

 

A1.その名のとおり、後見制度(成年後見と未成年後見)の対象となる方のみです。したがいまして、保佐や補助の対象の方は制度の対象外です。

 

また、基本的には、後見を開始するのと同時に行う場合が対象となっておりますが、最近ではすでに後見制度を利用されておられる方についても対象となってきており、現に家庭裁判所からそのような方の案件に対して、専門職後見人の推薦依頼が届いてきています。

 

Q2.信託の対象となる財産は何ですか?

 

A2.信託銀行などに管理を託する、という制度の性質上、対象となる財産は金銭のみに限られております。したがいまして、不動産や株式、貴金属などは対象外です。

 

Q3.信託銀行などって具体的にはどこの銀行ですか?

 

A3.現在、下記の6つの金融機関で取り扱いを行っています。最低受託額や手数料、契約の受付方法などが各金融機関により異なっており、また店舗の所在場所もさまざまですので、対象となる方の具体的な事情に合わせて選択する形になります。

 

※各金融機関名をクリックすると、各金融機関のホームページへリンクします。

 

 

 

 

 

 

 

※【補足情報】

平成28年7月27日から、地方銀行では初めて、千葉銀行が後見制度支援信託の取扱いを開始しました。

更に平成29年4月3日からは、岡山県に本店を置く中国銀行も、同じく後見制度支援信託の取扱いを開始しました。

 

後見制度支援信託によって、被後見人の方の預貯金が大手信託銀行へ流出してしまう、という懸念が、特に地方の金融機関の間でありました。

 

今般、地方銀行の中に後見制度支援信託の取扱いを行う銀行が相次いで登場したことで、他の地方銀行などの金融機関にも広がってゆくのか、注目したいと思います。

Q4.後見制度支援信託を利用するか否かの判断はどうやって行われるのですか?

 

A4.専門職後見人が行った調査・報告内容をもとに、家庭裁判所が判断します。

基本的には、財産が主に現金や預貯金で構成されている場合が制度の利用の対象となります。

 

一方で、下記のチェックリストに当てはまる項目がある場合には、後見制度支援信託の利用には適さないと判断されるものと思われます。参考にしてみてください。

 

※なお、下記のチェックリストは、「成年後見教室 実務実践編(3訂版)」(日本加除出版刊)に掲載のものを一部簡略化の上で引用させていただきました。ありがとうございました。

 

  • 本人の財産が少なく収支も赤字である等、費用対効果の観点から信託の利用が困難である。
  • 本人の財産に株式等の信託できない財産が多く含まれている。
  • 本人の遺言書が存在する(存在する蓋然性が高い場合を含む)。
  • 本人の身上に対する配慮の面に照らし、収支予定を立てることが困難である。
  • 説明を受けてもなお、本人などが合理的な理由なく、後見制度支援信託の利用に反対している。
  • 財産管理または身上監護をめぐり、親族間に意見の対立がある。
  • 財産管理の内容が複雑で収支の変動幅が大きく、将来の収支計画を立てることができない。
  • 訴訟その他の専門的知見を要するなど、親族が後見人になるのに適さない事情がある。
  • 親族後見人に、本人の十分な身上監護が期待できない事情がある。
  • その他、親族後見人に後見人としてふさわしくない事情がある。
  • その他、後見制度支援信託の利用に適さない事情がある。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。