9.成年後見制度を利用するにあたってのメリット・デメリット

Q.最近、私の父の自宅に訪問販売員がしょっちゅう来ているようです。父がその訪問販売員にだまされて高い商品を買わされることがないように、成年後見制度を利用して、金銭の管理などをしたいと考えていますが、制度を利用した場合に不都合な点はあるでしょうか。成年後見制度を利用する場合のメリットとデメリットを教えてください。


A.メリットとしましては、家庭裁判所が選任した後見人など、公的な立場の確たる権限を有する機関が意思決定を代行したり支援したりして判断能力を補い、本人の権利が守られるという点が挙げられます。


一方、デメリットとしましては、後見人・保佐人が選任されますと、権利の制限や資格制限を受けるなどの点が挙げられます。

お父様が、ある一定の地位にあったり、事業を営んでおられる場合には、その対応をしておく必要があります。


また、後見人が選任されますと、お父様の印鑑登録が抹消されます。


法定後見制度は、精神上の障がいにより判断能力が不十分な者に対し、申立人により家庭裁判所が選任した後見人などの機関が意思決定を代行したり支援したりして、判断能力を補い、もって本人の権利を守ろうとする制度のことで、その判断能力の程度により後見保佐補助の3つの類型に分けられます。


後見人には代理権取消権、保佐人と補助人には同意権取消権、更に審判により特定の法律行為についての代理権が認められており、高齢者や知的障がい者の悪徳商法からの保護に有効であると考えられます。


ご相談者のお父様のケースでも、もし仮に、訪問販売員からだまされて高い商品を買わされた場合でも、取消権を行使して契約を取り消す、ということが可能になります。


一方で、高度な経済的判断が要求されたり、他人の生命・身体・財産に関わる高度な判断能力が要求される資格や事業に従事するためには、一定程度以上の判断能力が必要とされます。


そのため、成年被後見人及び被保佐人の場合には、それらの資格や事業に関して制約を受けるというデメリットがあります。
※被補助人の場合には制約を受けることはありません。


ご相談者のお父様のケースでも、そのような地位にある場合にはその地位を失い、事業を営んでおられる場合には事業を続けることができなくなるため、その対策を講じておく必要があります。


【被後見人及び被保佐人に関する制限】


◎会社の取締役・監査役・執行役
◎医療法人の役員
◎社会福祉法人の役員
◎宗教法人の代表役員などの役員
◎医師、薬剤師、歯科医師、獣医師
◎社会福祉士、介護福祉士
◎弁護士、司法書士、行政書士、弁理士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、建築士
◎教員免許
◎警備業者
◎貸金業者登録、金融商品取引業者登録
◎建設業許可資格、宅地建物取引業免許
◎国家公務員、地方公務員 など


【被後見人のみに関する制限】


◎薬局開設許可
◎質屋営業許可資格
◎火薬類の製造・販売の許可資格
印鑑登録


※印鑑登録証明事務処理要領による各自治体の印鑑条例により、多くの自治体では、成年被後見人は印鑑登録を受けることができないとされ、後見開始の審判があったときは、印鑑登録を抹消するものとされています。