「6.相続による財産の受け継ぎ方…単純承認・相続放棄・限定承認」のページで、被相続人(亡くなられた方)の財産の受け継ぎ方には3つのパターンがあるというお話をしました。
ここでは、その中の「相続放棄」について見ていきたいと思います。
相続放棄とは、相続があったことを知って3ヶ月以内に家庭裁判所にその旨を申し出る(これを「申述」といいます。)ことによって、初めから相続人でなかったことにする手続きのことをいいます。相続放棄を申述することによって、被相続人の財産は一切受け継ぎません。
注.遺産分割協議を行った結果、ある相続人の方の取り分をゼロとすることを一般に「相続放棄」と言うことがよくありますが、ここでの相続放棄は、それとは全く異なりますのでご注意ください。
相続放棄は、以下に当てはまる事情のある方にはメリットが大きいです。
◎マイナスの財産(借金など)の方が明らかに多い場合
遺産分割協議による場合、マイナス財産をどのように引き継ぐ(引き継がない)かを相続人同士で決めても、債権者の同意がなければできません。しかし、家庭裁判所に相続放棄を申述すれば、債権者の意向と関係なくマイナス財産は引き継ぎません。
◎相続の争いに巻き込まれたくない場合
相続放棄をすれば、初めから相続人でなかったことになりますので、相続争いからも解放されることになります。
一方、デメリットとしては、
◎後からプラス財産(不動産、預貯金など)が発見されても、残念ながら受け継ぐことができません。
◎初めから相続人でなかったことになるため、仮に相続放棄された方にお子様などがおられる場合でも、相続人としての地位がそのお子様などに引き継がれません。
なお、相続財産を勝手に処分したりすると、相続を単純承認したものとみなされますので、ご注意ください。(つまり、マイナス財産も受け継ぐことになってしまいます。)
【相続放棄の申述の手続き】
申立ては、亡くなられた方の最後の住所地の家庭裁判所に対して行います。
民法の規定により、自己に相続が開始したことを知ってから3ヶ月以内に申述を行わないと効力を生じません。逆に相続が開始する前に(つまり、ご健在のうちに)相続放棄を行うこともできません。
必要な書類は、申述書の他に、
◎亡くなられた方の除籍・改正原戸籍謄本類
◎亡くなられた方の住民票の除票または戸籍の付票
◎相続放棄される方の戸籍謄本
◎収入印紙800円分
◎郵送用の切手(額は、家庭裁判所によります。)
※場合により、追加の資料提出を家庭裁判所から要請されることがあります。
相続人の中に相続放棄をされた方がいる場合で、他の方が不動産を相続された場合には、その相続による名義変更(所有権移転)の登記の申請に際し、「相続放棄申述受理証明書」という書類が必要になります。
これは相続放棄の申述を受理した家庭裁判所に申請すれば、1通150円(収入印紙)で発行してくれます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
はしもと司法書士事務所
代表 司法書士・相続診断士・民事信託士 橋本浩史(奈良県司法書士会所属 第471号)
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員(会員番号 第6410360号)
(後見人候補者名簿及び後見監督人候補者名簿登載)
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一般社団法人相続診断協会認定 相続診断士(認定番号 第512848号)
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