当ページで以前、こんなニュースを掲載させていただきました。
相続手続きを簡素化=戸籍書類、証明書1通に―法務省
法務省は5日、相続手続きを簡素化する「法定相続情報証明制度」(仮称)を来年度に新設すると発表した。
現在は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本など大量の書類一式を集め、登記所や各金融機関の窓口にそれぞれ提出する必要があり、相続人の負担となっている。
新制度では、最初に書類一式を登記所に提出すれば、その後は登記所が発行する1通の証明書の提出で済むようになる。
相続手続きの簡素化は、相続人や金融機関などの負担軽減を図るとともに、相続結果の登記を促して所有者不明の不動産を解消することが狙い。政府が6月に決定した「ニッポン1億総活躍プラン」などに盛り込まれていた。
法務省はパブリックコメントを実施した上で登記に関する規則を改正し、来年5月の運用開始を目指す。
現行制度では遺産を相続する場合、不動産登記の変更、相続税の申告、銀行口座の解約などのため、大量の戸籍書類一式をその都度、官民全ての窓口に提出しなければならない。
新制度では、まず登記所に書類一式を提出してもらい、登記所が相続情報を記載した証明書を交付。金融機関などでは証明書の写しの提出だけで手続きが行えるようにする。
(時事通信社 2016年(平成28年)7月5日配信のニュースより引用) |
つまり、法務局に被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの戸籍謄本類を提出すれば、法務局で相続についての証明書を発行してくれて、その証明書を金融機関などに提出すれば良い、という制度を創設する、という内容でした。
今までは、法務局、金融機関、税務署などすべてについて、それぞれ戸籍謄本類を提出しないといけなかったのが、最初に法務局に提出すればあとは証明書1枚さえ提出すれば良くなる、という触れ込みでした。
そもそも被相続人(亡くなられた方)の戸籍謄本類は、その方の生涯にわたる記録をすべてを取得することになりますので、ご結婚・離婚をされたり、本籍地を他の市町村に移転(転籍)されていますと、必要な通数が多くなりがちです。
また、提出先によってはその原本を還付してもらえないこともありますので、同じ戸籍謄本類を複数用意しなければならないため、皆様のご負担も多いものとなっていました(取得の手間、費用ともに)。
そして、この「法定相続情報証明制度」が、ついに平成29年5月29日(月曜日)からスタートしました。
ただ、私たち司法書士も、業務研修に参加するなどして研究しているのですが、どうもまだまだ皆様のご期待に応えられるような内容のものではない、ということがだんだんと分かってきました。
【問題点1】 金融機関が受け入れてくれない?
まず、そもそもこの「法定相続情報証明制度」ですが、銀行や証券会社などの金融機関、税務署など他の(法務局以外の)官公庁の事務負担軽減のため、という目的で作られたはずです。
ところが、肝心の金融機関の方が、この法定相続証明情報を利用することに消極的で、現在のところはあくまでも戸籍謄本類を提出することを求めるスタンスのようです。
【問題点2】 数次相続ではかえって手間がかかる?
また、法定相続証明情報は、被相続人(亡くなられた方)ごとに作成する必要がある、ということですので、例えば数次にわたって相続が発生している場合には、法定相続証明情報が何枚も必要になる、といった事態となってしまい、かえって余計な手間がかかってしまうおそれがあることです。
これなら、普通に戸籍謄本類を提出すれば良いではないか、ということになりかねません。
【問題点3】 他の不動産登記も処理が遅れる?
更に、法定相続証明情報の内容の審査は、不動産登記の場合と同じく法務局の登記官が行いますので、受付窓口は、法務局の登記申請窓口と同じ窓口であることから、相続と関係ない他の不動産登記の申請の処理が遅れるなどの影響が出るおそれがあることです。
とりあえず、新しく始まったばかりの制度ですので、まだまだ周知できていない部分や、改善が必要な部分はつきものですが、これからも状況の変化を注視していこうと考えています。
(参考資料) 法務省ホームページ「法定相続情報証明制度について」のページにリンク
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
はしもと司法書士事務所
代表 司法書士・相続診断士・民事信託士 橋本浩史(奈良県司法書士会所属 第471号)
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員(会員番号 第6410360号)
(後見人候補者名簿及び後見監督人候補者名簿登載)
簡裁訴訟代理関係業務認定司法書士(認定番号 第1012195号)
一般社団法人相続診断協会認定 相続診断士(認定番号 第512848号)
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